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オジタリアンと「鉄腕あとむ」の「ポルカ」

 オジタリアンと「鉄腕あとむ」の「ポルカ」



 東京だった。僕はそのころやっと都会に慣れつつあったとは言え、まだ田舎から出てきた青くさい二十二才の学生だった。デモでパクラれ、公安条例違反とかで三日間、警察の拘置で臭い飯をご馳走になってきた。保釈されてもすぐには下宿にも帰る気分にもなれず、通りがかりの小さな公園の水のみ場で、食らいつくようにして水をガブガブと飲み込んでいた。そして僕はドカッと両足を広げってベンチに腰を下ろした。

 まぶしいな。・・・世の中は平穏無事のようにその時間を粉しているようだ。暑い夏の日差しが青の匂いを醸し出している。・・・見上げると僕の頭にゴッソリと手をかかげてている大木。枝々とその枝に繁る葉々の重なりのわずかな空間から光がまぶしくチラついていた。・・・セミの声。・・・セミの声を聴くと、小さい頃に死んでしまった妹の顔がチラつく。可愛く、おちゃめな妹だった。

 目を広場に向けると子ども達がムギワラ帽子を被って無邪気に遊んでいた。二人の男の子が大木の陰に隠れて何かをやっていた。ジュ-スの空きビンに小さなペニスを摘んでオシッコを詰め込んでいた。小さい頃の男の子は誰でもやることがいっしょなのかも知れない。そんな行為は僕の記憶の中にもあった。そして、やや距離のあるところで男の子達の行為をジッと見つめている可愛いい女の子がいた。そして女の子はそれから視線をそらしてブランコの方に駆けだして行った。男の子達は目的を果たしたのかそのビンを手にして女の子の方に近ずいていく、そしてそのビンを女の子に差しだして何やら言っていた。僕には彼ら二人の企んでいることがすぐ分かったが、女の子はそのビンを一旦受け取ってからそれを逆に男の子の一人に差しだして飲めと言っているらしかった。男の子の困惑した表情がありありと見えて、何とも面白いのだった。

 次の日の夕方、昨日公園でみた女の子が独りで踏切の所で立っていた。

 「ねえ、君、昨日公園で会ったね。こんなに遠くまで独りで遊びにきたの?」

 僕は思わずその小さな女の子に声を掛けてしまっていた。

 「知らないもん。おじさんなんか、・・・見たことないもん」

 彼女は怪訝な顔をして僕を見上げてそう言った。

 「僕はおじさんなんかじゃないよ。おにいちゃんだよ」

 「おにいちゃんは別にいるもん」

 ・・・僕は「おじさん」ではないが、彼女にとっては「おにいちゃん」でもなかった。

 「そうか、でも君を見たよ、昨日公園でさ、男のお友達からジュ-スをもらったろう」

 「友達じゃないもん、あれ、おにいちゃんだも」

 「そうか、おにいちゃんだったのか。あれさ、あのジュ-ス、君は飲まなかったね。どうして?」

 「見てたんだもん。あれ、おにいちゃんのオシッコ」

 「そうなのか」

 「だからおにいちゃん、先に飲んだらって、言ったんだも」

 「ふ-ん、君って、偉いんだな。おうちはどっちなの?」

 「あっち、早く帰るんだもん、お母さんに怒られるから」

 そして彼女は小さな身体を駆けださせ、踏切を渡った。そして渡りきった所で立ち止まり振りかえって、真剣な顔を見せてから、口と頬をクッと引きしめて笑顔を作り

 「おじさ-ん、さようなら」

 と手を振ってまた走りだしていった。


 あいつは僕が足腰立たなくなってしまっているころには今よりも、もっと落ち着かない女盛りの絶頂だろうな。結婚して幸せな家庭のよき主婦になっているに違いない。 

 タイトルは「ボレロ」にしたかった。だけれど僕とあいつには「ボレロ」はそぐわないから、「ポルカ」にしてやろう。なんとなく僕にとってはあいつは「ポルカ」なんだよな。「ポルカ」もいいさ・・・でも「ボレロ」のような緊張感がほしかったな。


 ・・・・物語、デモないけど・・・はじまり、はじまり 


 「えっつ、中国に行くの」

 「うん、二ケ月ぐらい」

 僕は内心そのことを驚きを抑えながら嘘だと思った。でもそれはかなり真実性がある響きの言葉だった。またか、やられたな、あいつには。どうも相性(?)のサイクルが合わないようなのだ。それに活発で活動的、衝動的なのだからな。

 ・・・いま行かれたらこまるなぁ、折角、スリルとサスペンスを「真実」の匂いが漂いそうな幻想の中で「遊んでくれる女性」が見つかった、と思ったのに。あいつが当分の間いなくなるなんて・・・いや当分なんてものじゃない・・・じ・え・ん・ど・・・になるかも知れない・・・「戦い」の相手が戦線離脱なんて、そんなのないよ、な。潜在的な「逃げる材料」が見つかったと言う訳か。まあ、僕から都合よく見れば・・・その点、「両方」の立場を傷つけたくないと言う、あいつとしては「優しい方策」だったんだろうな・・・勝手に解釈すれば・・・僕との関係がついには「遊び」と「本気」が重なってしまい、ゆれてしまった結果なんだろうな。あいつにとって僕が「真実」にラポ-ルして面白い存在なら・・・・こんなことにはならないはずだから・・・興味の枠外に僕が存在するなんて・・・。あいつは自分が「ずるい」ことを百も承知して、それが自分の「優しさ」だなんてすりかえてしまうところが魅力的だし、とんでもないやつだとも思うんだ。

 「わたしって思い立ったらすぐその気になってしまうのよね。それに愛子さんが一緒だから、・・・彼女すごく面白いっていうんだもん」


 「愛子さんか」

 いいな、あの愛子さんの優しそうな笑顔。心がゆれてしまうよ。どうしてあんな敵意のない隙だらけの「いい顔」になるんだろうな。男ならあの笑顔にすぐ参ってしまう。愛子さんは「のんべ」で、すこし「変わっているらしく」ても、本当の所は芯があいつとは違い、用意周到で根性が座っているのだ。それに小柄だけども負ける勝負はしないタイプなのだ。それに引き換え、あいつは他人の「きつい言葉」に反発しながらも弱いし、「優しい言葉」にも弱い。「勝気」な割には「自己本意的」に影響されやすいからな。「勝気」が最後には他の「代賞行為」を求めて「逃げる」ということに裏返しにされてしまうんだからな。周りとの自己存在や主導権をすごく意識する割にはもろいんだから。

 ・・・・そりゃあ、あのシンの始皇帝の国だものな、僕だって行ってみたいさ。あいつはB型だから多分に中華大陸の「血」を、その民族の本質を延々とその内部に引き継いできた奴なのかも知れないな。「農耕的漢民族」。いまはその過去への「血」が騒いでいるのカモ。そして愛子さんは「農耕民族」を慎重に攻める「放牧民族」・・・なぁ-んて考えても、問題は「別」なところにあるし、性格だよ性格。単なる衝動。その点、その「衝動性」がとんでもなく不思議に展開する奴であることが段々と分かって来たんだ。

 ソウ・・・十月から始まって・・・・・・メルクマ-ルは十一月の誕生日だった。あいつが僕とかなりの、かなりの年齢差があるといった所で気にはしないのだが、あいつのつき合う「男」や会社の社長連中が僕と同年代の、モウ、かなりの、かなりの「おじさん」なんだからな。その感覚で僕を見られちゃァ、どうしょうもない。こちとらは全々金のない「びんぼうにん」なんだから。金のないということではあいつは僕にかなり優しかったが。・・・とはいっても本当の所、同年代の若い奴が理想なんだろう。でも疲れるんだろうな。若い連中は精神的に。「動的」には面白いんだろうけれど。「勝気」な精神には耐えられない「何か」を感じているんだろう。「優しく」ないからな、若い男は。そして好きな「男」には「女」であることを「比較」され萎縮してしまうんだろうな。充分に魅力的なのに対示する同年代異性の吐く「言葉」に傷つくのを恐れているんだろうな。しかも僕はけっして「おじさん」や年寄りみたいな「優しさ」は持ち合わせていない。この歳で頭の構造が学生気分の延長線で何時だって自分のことを棚にあげて感情的に鋭くなってしまうんだから。

 ソウさ・・・だからあいつは、優しい「まるやのおじさん」とだって物語が出来ちゃうんだ。よくもそんなハナシをこの僕にしてくれたな、(おっと・・・後免)。ラジオを聴いていたら「おばタリアン」現象なんてのが流行っているらしく、なんと「おじさん」の「おばタリアン」現象化を「おじタリアン」と言うそうなんだ。・・・そうだな僕はさしずめ、状況の中では年齢的にいまあいつと「おじタリアン」現象で戦っているのに違いないらしいんだからな。もちろん・・・僕はそんなつもりは毛頭ないと思うんだが・・・「恋」の始まり・・・は、何時でも真剣勝負だ。なんでもかんでも「中世騎士道精神」か、「英国紳士風」で女性には関わらなくちゃ、と思うのだが、やっていることといえばチグハグだ。世間は「ドン・キ・ホ-テイ」みたいな僕をみている「サンチョパンザ」か。・・・それでもいいよな「ドンキさん」は時代の狭間で騎士道精神に徹底できた存在だったから。馬鹿でも何でも。

 僕のあいつへの関わり方は・・・本当のところ僕にも解らない。「好きで不安定で感動的な時間があった」。男と女の関係はそう平穏無事じゃあ物語にもならないしな。日常的な緊張関係が弛緩するなら作ってやらなくちゃあ。・・・「幻魔大戦」だ。だけどだよ・・・何時だって僕と異質な「性」をもつあいつらは都合のいいように接近しては僕の目の前から消えてしまう・・・と思うのだ。そりゃあ、あいつらから僕を見たらかなりの、かなりの「変人」であるらしいけれど僕の言っていることだって考えていることだって「社会規範」を踏まえた極々まっとうな人間だ、と思うんだけれどもな。変に見えるのは時代と個人的歴史の賜なんだが、あいつは僕を「やっていること自体が変なやつ」の部類に入るというのだ。そうだろうな。変なんだろうな。とにかく、あいつにとって、初めは何でも「ゲテモノ」であれさえすれば魅れる存在らしい。

 で、いまや、あいつにとって興味が半減しつつある僕としては、一般的な形で関わらなければならない諸条件は皆無であるし、初めから方策がなかった、ということかな。金もないし、それなりの魅力もないんだからな。

 ・・・そして、ついに始めることにしたのだ・・・「心理学幻魔」大戦・・・を、終息を恐れつつ。

 理由・・・好きだから・・・あいつが。「恋愛仁義」を無惨に踏みにじるあいつが好きだから。


 「へ-え僕の全記憶力とダブッテいる-う」

 「どおしてって、お父さんが鉄腕アトムの本もっているんだもの小さい頃からず-っと、わたし愛読者。へへへへ・・・へっ」

 「あれさ、あれあれブラック・ルックスさ、知っているの」

 「もちろん。黒い覆面をして、ロボットに復讐するのよね」

 「それそれ、ロボットの工場長かなんかをさ復讐のために破壊してしまうんだ。そのロボットの彼が破壊される前にさ、命請いをするんだ。わたしには妻も子供もあるって。おかしいよな、あれ。ロボットのくせに、妻と子供だなんて。でも僕あの漫画好きだから何度もみたんだ」

 「お母さんをロボットに殺されてしまったってさ、勘違いしているのよね。ルックスは」

 「そう、それでさ、ほんとはルックスは孤児なんだよな」

 「そうなの、お母さんだと思っていたのは自分を拾って育ててくれた女型のロボッツトなのよね」

 「そうなんだ、その壊れたお母さんのロボットは、南アフリカか、どっかでさ人種差別があるような所でごみ箱かなんかにすてられているんだ。それをアトムが捜し出してきて、御茶の水博士がなおしてやるんだ・・・それでさ、最期の場面知っている?・・・一番しあわせなとこはお母さん膝の上・・なんだ。ルックスがさ、お母さんの膝の上で遊んでいるのを暗示するように、事件が落着した後、アトムがお母さんの膝に頭をのせてなぜてもらっているの。・・・僕は何時もお母さんの膝が恋いしいマザコンタイプかな」

 そう言いながら僕はあいつの膝に自分の頭をのせてやった。本当のところ僕は現実的に自分の母親にその行為として甘えたことがない。小説や物語や映画の中で観念的に「母親」に甘え、オ-バ-ラッツプすることがすきなのだ。それが現実にできるのは「恋人」としての女性しかないはずだ。だが、あいつはどうなんだろうな。女親と娘の関係。

 「・・・・」

 あいつはその一コマに関して記憶がないのかも知れなかった。それとも・・・敢えてそれに触れたくなかったのだろうか。あいつは自分の母親との戦いがシ烈だったことをこの前のデ-トで話していたから・・・僕だって「娘」のいい加減な行動を許しはしない。あいつのやったこと・・・中年マルヤ男との関係(?)・・・に共感するよりも僕にはあいつの母親の「呆然自失」となった気持ちがよく解るような気がするのだ。しかもあいつは後でなぜそんな話をしたのかと言う理由を僕に言ったのだ。

 「だって健二さんが年齢的なハンデイを感じて苦るしんじゃぁいけないと思って」

 「・・・この僕が・・・苦しむって・・・」

 あぜん、と言うよりは他になかった・・・そうか僕の立場をおもんばかってなのか・・・優しいんだ、あいつは・・・自分も相手も傷つけたくないんだろうな・・・悲しィ・・・な、僕と対等に「男」と「女」でつき合ってくれないんだったら。「優しさ」の視点がもっと僕によっていてくれたらいいのにな。「まるやのおじさん」の物語は逆に僕を苦しめる結果になったんだからな。僕と「まるやのおじさん」は同類みたいなもんだけれど、「まるやのおじさん」ほどの「優しさ」が僕にはないのも当然だけれど・・・人はそれぞれか。それにしてもだ、いまのあいつはかわいいやつで、最高な奴には違いないのだった。僕はいつも僕と共通の場で遊んでくれる誰かが必要であることをズ-ッと少年の物語のように切望してきたのだった。あの映画、デボラ・カー主演(?)の「回転」、悲劇的に殺された恋人同士の霊が子供達の肉体を借りて古城の中でヒソヒソと、楽しそうに戯れ合っている関係・・・それはもちろん女性の「誰か」なのだ。

 ・・・そして「鉄腕アトム」は僕の人生の思想的根幹なのだった。それをあいつは別個なところでその「物語」の記憶を得ていたのだ。テレビやアニメの子供子供した「アトム」じゃない。原本でなのだ。「未来科学」の最高傑作である「アトム」は「天馬博士」が自分のひとり息子を交通事故でなくし、気が狂るわんばかりの悲嘆をバネとし、その「命」に変わるものとして生み出されたのだ。しかし創り出された「アトム」は人間ではなかった。いまは存在しない息子、「とびお」への、愛しい者への人間的な葛藤と苦悩。そして創り出した「アトム」へのエゴイスチックな憎しみの転嫁。

 ・・・そう、「天馬博士」の心境はいまの僕の気持ちにダブッテしまうのだ。そしてあいつは「子ども」を自覚しない「子ども」の「アトム」なのかも知れない。・・・早熟な少年期に僕たちにその人間と社会のあり方を、そして自然に対する生き物への問いかけを常にしていたあの「アトム」の「原点」そのものを、僕はいま、あいつと、彼女と、ときめきながら語り合えるのだったのだから。・・・だが、あいつは単なる「物語」の記憶としてしか僕とそれを話しているのに過ぎないのかも知れなかった。・・・・それでも、それでも有り余るほどに僕はよかった。

 「赤い猫って知っている?」

 「うん、国木田博士がでて来るのよね。人間が余りにもムゲに武蔵野の自然を破壊してしまうんで、怒っちゃってさ、かわいがっている猫をリ-ダ-にして復讐をしょうとするやつでしょう。それもさ、国木田博士って、お茶の水博士の親友なのよね。・・・赤い猫だって、チャンと読んでるもねッ」

 こいつはなんて感動的な奴なんだ。僕はとっても、とってもうれしくなってしまった。「赤い猫」の「チリ」。僕の記憶では「国木田博士」は「四つ足教授」で、最後の場面で「ひげおやじ」が国木田独歩の「武蔵野」を独白しながらその武蔵野を歩いて行くのだ。「鉄腕アトム」はお父さんの本で、もう古くなってボロボロになっているのを読んだ、とあいつは言うが、僕なんておふくろがわずかな給料にもかかわらず、三十数年前に買ってくれた高価な単行本なのだ。いまも田舎の本棚の中にきちんと宝物のようにしておいてあるのだ。友達には敢えて貸してやったがエゴイストの極みのように本当は貸してやるのが嫌だった。「赤胴鈴之助」がどんなに強くても、「鉄人28号」」がどんなにすごいロボットでも、「鉄腕アトム」のその「思想とヒュ-マニズム」にはかなわないはずだ、と思うのだ。そして、あいつは僕の記憶とどこからどこまでも「アトム」の「物語」に関しては重なっていた。

 「ZZZ総統は?」

 「知っているわよ、馬鹿になる毒ガスで馬鹿な世界の指導者を馬鹿にしてしまうのよね。ロツクがでて来るの」

 そうなのだ。当時の国家的指導者は「戦争」そのものの「力関係」こそが世界の秩序をまもることができる、と考えていた節がある。いや、いまでもそうなのだ。僕は「暗殺」にも似た「ZZZ総統」の「国家的指導者を馬鹿にしてしまう思想」に単純に共感したのだ・・・戦争を、ヒト殺しを、望んでいる奴は、みぃ~んな「馬鹿」にしてしまえばいいのだ。だが「ZZZ総統」の円卓会議ではあくびをしながら「ああ、一体、何人を馬鹿にしたらいいというのだ」という一コマがあった。「馬鹿」にしても「馬鹿」にしても「馬鹿な指導者」が現れるからなのか。それとも、「馬鹿な指導者」でも「馬鹿」にする「権利」は誰にもない、と言うことなのか。・・・迫力があったのはどこかの「暗殺」予告された「大統領」が日本の能舞台でカッポン、カッポンと堤太鼓の音に舞う能面、赤毛の役者を見ている場面だった。伏線的に登場するロックはその「暗殺」の企てを阻止しようとする。タクシ-に乗るが、そこで「日本の車には電話も付いていないのか」、とセリフを吐くのだった。あの時代からいまや無線の付いていないタクシ-はない。テレビさえ付いている。

 「ホット・ドック兵団は?」

 「ひげおやじのかわいがっていた犬、ペロがサイボ-グにされてしまうのよ」

 そうなのだ。サイボ-グにされても「犬の習性」がついついでて足で首などを掻いてしまうのだった。

 「じゃあさ、火星探検隊は?」

 「エイリアンの地球侵略を確信して火星に取り残されたベ-コン大尉、ロボットであるアトムが探検隊の隊長になったことに不満を持つケチャプ大尉、それにベ-コン大尉の妹であるキャベットがでてくるの」

 そうなんだ、あいつはよく知っているのだった。過去の火星探検隊のトラブルを反省して、人間の感情よりも冷静に判断できるとした「博士」達が「アトム」を隊長に抜擢するのだ。お茶の水博士はそこで言うのだった。「アトムはそんな冷たい感情を持ったロボットではないですぞ」、と。それにあの軍人としての魅力的な「ケチャップ大尉」。すごくかっこいいのだ。ロボットが上官であることが耐えられない彼は常に「アトム」にアンチテ-ゼで迫る。・・・彼女、あいつも「自己本意的」に話の筋に固執するところは彼にちょと似ている。・・・だが、「ケチャップ大尉」はエイリアンとの戦場で自ら軍人として、部下としてその使命を果たすべく戦いの指揮を取り戦死するのだった。その戦いが終わった戦場を「アトム」はジ-プに乗って最敬礼をしながら通過していくのだ。僕に取って思想の如何を問わず「軍人」は「ケチャップ大尉」でなければならない。・・・「星」はあいつを「使命感」の人と「暗示」するが・・・。

 「オメガ因子は?」

 「もちろんよ。黒人の博士がより人間に近い完成されたロボットは悪の心を持つと言う思想なのよね。それで結果は自分の作ったロボットに殺されてしまうの」

 すごい、もう感極まる感動であいつの記憶と僕の記憶はかさなっていくのだった。

 悪は「何」に対する「悪」なのか?人種差別の中であの「オメガ因子」を「思想の極みとした黒人博士。そして「オメガ因子」を有したロボット「アトラス」・・・「復讐」、当然にも「目には目、歯には歯」である・・・道徳的にも、倫理的にも、社会規範的にも対等に対示出来ない関係では「復讐」はその基盤なのだ。

 ・・・「恋愛」においてすらその「関係」の利害において「復讐」あり、なのだ・・・「恋」に破れるものに栄あれ。「愛」をもて遊ぶものに鉄ついを、だ。

 「ゲルニカ、知っている?」

 「そう原子力発電所の近くでミイラになった死体が発見されるのよ。原子力を利用してカタツムリを大きくするのよね。ある博士が食料不足解決のためだったかな、そのために実験していたの。それが巨大なカタツムリなんかになっちまって」

 「それでおばけのカタツムリが都会を破壊するんだよな。・・・それでアトムどうしたか知っている?」

 「塩、お塩をカタツムリに振りかけてしまう。ハハハ・・・ハッツ・・本当に面白いのよね、人間が大砲だ鉄砲だって言ている時に、お塩だもの」

 無邪気に笑うあいつは最高だった。もう、もう、もう。どうしたって、あいつを好きにならずにはいられない。・・・だが食料こそ生きてし生きるものの問題なのだ。軽く笑う「飽食」に慣れたあいつには「中国」の現状がどこまで重みを迫って自分のものとなるか。だが美味しい「中華料理三昧」の話も悪くはないさ、な。あいつが干もじい状況で何かをかじっている様なんかは似合わない。あいつは大勢の家族の中で食卓を囲み、かしましく、我がままに箸をつけているのがふさわしい。

 ・・・・いまはそんなことはどうでもいい。僕もその時はあいつと幸福な笑いを共有しながら、あの「ゲルニカ」の最後の一コマを、「ひげおやじ」がキョトンとして「アトム」が取った解決手段をラジオのニュ-スで聴いている場面を、思いだしていたのだから。

 なのに、そう、毎日来てくれると言うのに、好きだと言うのに・・・合わないのだ・・・一方的にサイクルがずれてしまうのだ。

 「幽霊製造機」は、「ゴルゴニアの独裁者」が自分のダブルを創る機械であった。レジスタントのロボット「プラチナ」は「幽霊製造機」の発明実験者の博士が造った「アトム」のようなロボットだ。この博士はうわべは独裁者の言いなりになっているが、実は既に未完成の「幽霊製造機」で自分の分身を創ってレジスタンスの影の指導者になっているのだった。事件は落着するが「アトム」は「無断で国外にでたロボットは破壊」と言う「ロボット法」による自分の「存在」におののくのだった。

 「コバルト」、そして透明のロボット「電光人間」。「コバルト」はアトムの弟だったが「アトム」ほど器用じゃない。・・・・それに海難事故が多発して大勢の人々が海底に沈んで行った物語があった。「海蛇島」。実は海底の資源発掘のために何処かの国が船を沈没させて、その乗員、乗客を拉致し、奴隷のように海底で強制労働させていたのだ。戦後引き上げ者の・・・「シベリア強制労働」・・・帰還できない者達の悲哀と苦労、負けたものはいつも「暴力」で虐げられる。何も「シベリア」だけじゃない。「奴隷」はいまだってある。この日本にだって。「状況」が見えないだけなのだ。・・・あいつは小さい会社で「不満的な賃金」な割にはよく頑張って働いていたが。よく働くということは日本的状況の中での「奴隷」なのだ。だがサボル訳にも行かない。欲しい物はそれなりに「自由」に買えるから。・・・ロボットの「アトム」が救出した女の子に惚れられる話がダブル。「ロボット国際法」は「許可なくしてロボットは勝手に国外へ出てはならない」と明文し、それを犯したロボットは無条件で破壊される、とある。ロボット故に自分の身上を知られたくないと言うあの「アトム」。事件の後、女の子が父親と「アトム」の学校へ訪ねて来る。女の子は「アトム」が「土人の娘」に殺されたと思い込んでいるのだ・・・女の子は言う、「ここがあの人の母校なのね・・・あの人を好きだった」と。「アトム」がロボットであることは「人間の娘」とは「恋」が成就できない、と言うことなのだ。・・・僕とあいつの関係もそうなのだろうか?いま僕は「アトム」なのかも知れない。・・・「アトム」は学校の二階の窓から女の子が去って行くのをジ-ット見ているのだった。・・・その「土人の娘」も「殺したはずのアトム」を「勇者」故に愛していたのだ。「愛」は不平等で悲しく、我がままで、もろく・・・まったく「愛」って厳しい、な。

 それに「電光人間」って言えば自分の存在がナルシストみたいでセルフシュなロボットだった。だが、実はできたての純粋無垢なクリスタルで出来た透明なロボットで、人間の「芸術至上主義」的観点からロボットの展覧会に出品されたものなのだった。コールタールを塗りつけられた彼女(?)が「イヤァーン」と悲鳴をアゲル場面の彼女(?)に僕はオトコを感じて惚れた。この作品は石森章太郎が代筆した、とか。そのひとコマには「デキソコナイ」が描かれていた。完全なものは「悪と善」を共有する、と言う、あの悪玉「スカンク・草井」のニヒルに偏った思想。「善悪」の基準は自分に対示する「社会的状況」に決定されるのだ。全くそれがこの宇宙に存在するイキモノの「二律背反的」な本質ではあると思うが、「恋愛」にも言える。アトムは「ホモ」的に「電光」を「愛」しちまったんだろうかな。破壊される宿命の彼女(?)を僕も「アイ」した。

 ・・・あいつと僕の今ままでの状況・・・あいつは子どものような「電光」で、この世間の「悪」と「善」の狭間で漂う幼い女。僕はそれを見ていられない思い込みの激しい、お節介な「おじさん男」。しかも、あいつ以上に「自己本意」的に「自分の利害の枠内」であいつを縛りたいだけなのだ。「アトム」の心境はどうだったのだろうか?・・・「電光人間」はあまりにも美しすぎた。

 ・・・それにしてもだ、あいつは感激の一語で、「アトム」に関してはよく知っていた。登場人物だって「ひげおやじ、シブガキ、ケンチャン、たまちゃん、中村警部、タワシ刑事、、ランプにハムエッグ」。「十字架島」にでて来る変身自在な「プ-ク」。それにあの偏見とプライドの高い英国紳士「シャ-ロック・スパン」もだ。・・・プライド、それは高貴で気高く、そして孤独だ。・・・孤独と言えば「イワンの馬鹿」だ。月世界に取り残された「女宇宙飛行士・ナタ-シャ?」の物語だった。・・・あいつにも悲しくも耐えられない「孤独」はある。・・・泣くなよ。我がままでもいいんだ。我がままを通せる奴には、我がままでいいんだ。

 ああ、何と言うことに、あいつと僕の関係がギクシャクしだし始めたその時期に、・・・「アトム」が死んでしまった。

 ひょうたんツギ・・・てづかおさむし・・・てずかおさむ・・・手塚治虫が死んでしまったのだ。・・・暗示的ではあったナッ。

 そう・・・もう、僕とあいつの関係は終息に向かいつつあるようなのだ。

 そう、それに加え、僕がそれなりの意図で・・・「心理学幻魔大戦」などをたくらんだから・・・。

 「愛」しているなら・・・やめとけばよかったのに・・・ 

 あいつが僕のことを単なる「遊びの相手?」として話を展開しだすから僕の心は動揺してしまったのだ。

 「寝たからと言って、私たちの関係はどうなるものと思わないけれどね、でも健二さんとは寝てもいいと思ったの」

 そう彼女は言ったのだ。なんてこと言う女なんだろう。どう言うつもりで吐いた言葉なんだ。・・・あいつが心の中でそう思っていてもいいんだ・・・「コトバ」にしないでくれ・・・僕の気持ちは妙に変になってしまった。

 「僕たちこれで、恋人同士になれたね」

 なんて、僕は独りよがりな言葉を吐いていた。

 「わたし、ほら、健二さんとの会話の中で、それなりに匂わせていたでしょう」

 あいつは一体、何を匂わせていたというのだ。「遊びであること」、僕から離れて行くことをなの?・・・・状況を考えてみたら・・・あいつは、やっぱし、僕のことを次の男への「つなぎ」の相手としてか、あるいはN君のあて馬か、K君へのあてつけ・・・としての男なのか。それでもいいんだ・・・でも、まいった。ホットに涙が出て来る。僕もそれなりに「優しく大人の遊びの次元」であいつを考えてやればよかったのに。でも僕の性分は関わってくる女達に対しては「SEX」での「遊び」の部分は皆無なんだ・・・苦しくなってきたんだろうな。僕の「本気」の気持ちが。・・・そうなる「結果」を「コトバ」で先取りして「宣告」するなんて許せない。

 ・・・よし、納得した・・・

 「もう、おまえなんか嫌いだ」

 僕は50%の気持ちで、そうあいつに言って別れたのだ。キスも嫌だし、顔を見るのも嫌になってしまったのだ。後の50%は男としての賭だ。・・・勝負にはならないかも知れない・・・まあいい一年前は天涯孤独を決め込んでいたのだ。打算的なサオリが他の男と関係し、その男が結婚してくれそうもないとわかるや、「だまされた、だまされた」、と泣いてきた。だが、もはや僕の精神部分はサオリに対して寛容の部分が修復不可能になってしまったのだ。

 「浮気を本気でやれよ。本物になるだろう。遊びだったら、遊びも本気でつづければいいだろう。男と女の関係は自己犠牲、妥協、協力だ。SEXでの結び付きは単なる快楽じゃないんだ。その枠内での運命共同体としての単位なんだからな。遊びだったらそれも徹底するべきだよナッ」

 「・・・だって・・・そんな難しい理屈は健ちゃんだけのものじゃないの」

 そうなのだ、単なる原則論的、観念論的、へ理屈なのだ。だが、僕の言葉は

 「・・・いまさら浮気でした、なんて泣いて僕の部屋を開けないでくれよ」

 だった。

 「わたしの気持ちもわかってない癖にして、・・・後免・・・ねえ、とにかく考えなおして、お願い・・・」

 分かっているさ、分かりすぎているほどに分かっているさ。僕そのものの関わりが不安になっていくんだろう。心は「星」と同じく常に動いて行く。そしてその動きに規定されて現実の場で人間関係も動いて行くんだ。・・・だが、すべてじゃない。全てだとしたら僕の存在も君の存在も余りにも悲しすぎるじゃないか。

 そして、女そのものの武器で迫って来る。それが返って僕の「許そう」と言う気持ちにブレ-キをかけてしまうのだ。僕に取って大げさに言えば「SEX」は雄グモや、雄カマキリのように「実存」すらかけたものなのだ・・・笑チャウ、よな、こんな男。


 ・・・僕はボロッチイ車を走らせて自分のむさ苦しい部屋に帰った。明日はあいつとの関係はどうなるのだろう?・・・もう僕の事務所にも店にも来てくれないかも知れない。・・・あいつとの電話での最初の会話が・・・そう暗示していたのか。こっちにだて責められる理由は山ほどある。

 「どうしてまだ独身なの?」

 と、あいつは訊いて来た。

 「どうしてって・・・年だし、金もないし、僕に関わってくる女性は次の結婚が前提の新しい恋人が現れるまでのツナギを目的しているからさ。真剣に僕との結婚なんて考えてくれた女性なんかいないからな」

 寂しくはあったな、そんな言葉を自分から吐くなんて。・・・でもその部分の「コトバ」だけで僕を一時的にタ-ゲットに絞ったのはさすがにあいつだった。女のその部分の感は鋭い、と思う。「氣」が楽な相手だと直観したんだろう、な。

 僕は自分の母親が少年のころ、「男」との関係で問題を起こしたことを会話の中でチラッと話した。あいつの反応は主語に補足がない「自分に正直な人なのね」だった。・・・どういう意味だ。

 部屋のブザ-がなった。誰もきそうがない汚い所へ。ドア-を開けるとあいつが涙を浮かべて立っていた。感激・・・恋愛小説の一場面だった。堅く、堅く抱きしめずにはいられなかった。でかいあいつだったが本当に小さく少女のように見えた。・・・言葉はいらないはずであった。・・・あいつの不安に波うっている鼓動の身体だけをきつく抱いてやればよかったのに・・・だが、僕の感情とは裏腹にでて来るコトバはあいつをやっつけるだけのものだった。

 「君は僕の大切な大切な宝物だと思っていたのに。僕にとってそこら辺に転がっているありふれたビ-玉じゃないのに。・・・だけど君は僕を単なる沢山のビ-玉の一つとしてつき合いたいんだな。そんなのずるいよ。不倫でも浮気でもなんでもやればいいじゃないか。僕のことをそんなに真剣に考えなくたって、嫌になったらポイすればいいだろう」

 僕は彼女が来てくれた感激とは逆にあいつを言葉でなぐりつずけていた。なんにしてもあいつが僕の部屋に来てくれた「事実」を確信すればよかったのに、僕は男の優しさをかなぐり捨てていた。

 「友達の店には来ても何にも言わない。でも明日からは僕の事務所にはあがってくるなよ。いいか。わかったか」

 「・・・仕掛たのはどっちが先だったのよ」

 あいつは、そう言った、のだ。僕には驚きのコトバだった。

  「・・・仕掛けたのがどっちかって?」

 僕の頭には昔の女の言葉がよぎって行った。「責任」の問題なのか。・・・「何に」対する?「責任」、あいつが望むなら「運命共同体」になる責任ならいつでもある。だが、あいつのその「言葉」にはどう言う意味があるのだ?・・・そして僕はこともあろうに「さあ、帰れ」と言ってしまったのだ。何と言う「騎士道精神」なのだ。何と言う「狭了」なのだ。「出来事」と「事実」のみを信条にしていた僕は何処に行っちまったんだろう。いや、もともと観念的なイデ-に捕らわれすぎているのだ。「言霊」にあまりにもホンロウされていた。

 あいつは涙を浮かべてあいつの車の前で

 「本当に健二さんが好きなのに・・・」

 と、一言、言って車に乗り込んで帰っていった。

 感激だ、感激-ィツ。・・・だが・・・


 「わたし、つき合う人は個別的につき合いたいの。浮気性なのかしら」

 「・・・浮気性なのは誰でもだろう。個別的にって、どう? 例えば、金、sex、スポ-ツ、知識、音楽、趣味で。それともSEXの日替りメニュ-見たいに」

 と、僕は内心「浮気」という言葉を嫌悪しながらそう言っていた。あいつの口から、そんな言葉は聞きたくないのだった。僕のようなタイプの人間はそんな言葉は嫌なのだ。・・・個別的に「一流の人」とつき合いたいのか。「星の暗示」どうりの言葉だな。・・・だが僕には「浮気性なのかしら」という言葉が「SEX」がらみに聞こえてしまうのだ・・・イイじゃないか、他人とのセックス・・・男女の肉体的関係と精神的関係・・・どちらが重いんだ・・・嫉妬、コノ感情、理屈じゃない・・・サッ。納得は無理だが、あいつは自分が自分に正直であることをモット-にしているらしいが、本当の所子どものように「自己本意」で「我がまま」なんだ、と。しかも大人の部分で「それがどうしたっていうのよ」と居直るところがすごいのだ。

 もう、「心理学幻魔大戦」に突入せざるを得なくなってしまてきた。この際、相手を無視してやる「戦術」か、「痛み」を自覚させてやるかだ。必要とあれば追い打ちをかけてやることだ。・・・・そんな必要があるのだろうか?・・・ある。・・・好きだから、そして、あいつは僕の「鉄腕アトム」を踏みにじろうとしているんだから。・・・我がままであってもらいたいのに、僕の我がままが許さない。あいつのそれに応える器量がないから「幻魔大戦」なのだ。・・・「問題」を知っていながらスルリと意図も簡単に他に転嫁してしまう奴なのだから。

 ・・・だが、猶予を与えてやろう。あいつの楽しみまで奪う訳にはいかない。あいつは僕をほかって行っちまうけど、スキ-旅行は楽しんでくれ。僕が好きになってしまったんだからしょうがない。なるほど、ホレた奴の負け、ってやつか。

 「何があっても全面降伏だって、あいつに伝えてくれないかな」

 僕はあいつの友達にそう言った。消耗しているのはあいつか、それとも僕なのか?だが戦いはこれからだ。いつもあいつの顔を見て優しく親切にしてやりたいのに。・・・戦いだ。


 十月、十一月、十二月、いいム-ドだった。交通事故で追突したあいつが首に包帯をして僕の知り合いの店にきたのだった。僕はあいつを「誰」かと勘違いをして気軽に声を掛けたのだった。始まりはそこからだった。最初は取りったてて意識していなかったのだが。そして友達と僕の事務所に来たのだ。当然その時、僕は当り前に「問題」を抱えている女性として対していた。あいつの「腐れ縁」だと言うN君の問題をとっても重要な問題として捕らえ返していればよかったのに・・・その延長であいつの問題として対していればよかったのに。

 ・・・だが、店と事務所の状況が不思議と僕とあいつの関係を結び付け出していった。そのきっかけは、あいつの学生時代の「苦しかった人間関係の問題」がそこの店で働く従業員の姉と密接な関係であることが明らかになって行ったのだ。不思議だった・・・あいつの、あの涙。僕の見せかけではない同情。・・・星周り、そして、あいつの誕生日と店の連中の言動が僕の気持ちを動かすことになったのだ。

 ・・・「ぐずぐずしてたら、他の男にとられてしまうよ、ケンちゃん」・・・そうかな、どうして?・・・あいつの会社の忘年会。・・・星周りの暗示に酔ってしまったのだろうか。・・・クリスマス・パ-テイ。僕はあいつが僕の部屋にやって来て欲しいこと伝えたのだ。

 「僕たちの星周り、この月、異性縁が活発になるんだ。二人とも、肌の温もりを切望しているし、フィ-リングが重なる運命に違いない」

 あいつが、僕の部屋にやってきた。不思議だった。「星周り」が意味する暗示どおりだった。

 眼鏡美人だ。瞳がきれいに澄んでいた。眼鏡の奥をよくよく見ると目の形と鼻が昔つき合ったことがある彼女に似ていた。雰囲気も身体のでかいのも。昔の彼女は男の面倒をこまめに気をつかってくれたりなんかもして・・・僕の男友達がくるとカレ-ライスなんか作ってくれた。・・・だがあいつは僕にそんな気を使うやつじゃない。・・・独り暮しに慣れた僕にはそれがよかったのだ。昔の彼女は眼鏡は掛けていなかったがど近眼だった。デ-トの約束をして側まで僕が行くのだが声をかけるまで気が付かない。そっと側に近寄ってベンチの隣に座ってもまだ気が付かない。返って席をずらして座り直すのだ。あいつは乱視だという。・・・乱視、現実がゆがんで見えるのだろうか。ゆがむところがいいのかも知れない。昔の彼女が「静」ならあいつは「動」だ。だが二人ともギタ-が上手で歌うことが好き。よく本を読んでいるやつだった。酒も酒豪だ。飲むと大胆不敵。眠っている時も豪傑・・・昔の彼女は、勘違いして僕の前から消えてしまった。・・・あいつとは違う。当り前だ。しかし、抱えている問題は同じだったのかも。

 あいつの酒豪ときたらすごい。みんな酒を飲んで精神的に強くなるらしいと、思っている節がある。いまにアルコ-ル依存症になって「オラは天国へ行っただ」になるのは目に見えている。

 原則論とおり、関係が始まるときから問題は起こるのだ。

 「ヨッパラッテイルわたしのハンデイを無視するなんて」

 ・・・冗談には違いないが、前にも別な女から聞いたことがあるようなセリフだ。いい雰囲気で身体を重ね終わって、感激の余韻に浸っていたのに、突然、「わたしはそのつもりがなかったのに」と言うのだから・・・アゼン。僕はレイプしたつもりはないし、相手を無視してヤッタ訳でもない。あんなに「滑稽」なほど一生懸命やったのに、ラポ-ルだと思っていたのに、百年の恋も醒めるというやつだ。「寝る」なんて言うことは当然「愛しているか、愛し始めたとき」の結果だと思うんだが、それは相手の意識じゃない。・・・で、「駆引き」なのか。・・・僕としては「寝るには」それなりの実存的決意がいるんだ。今時、一笑にふされるのがおちだけれど。「ハンデイあるのに」なんて言われてしまうともうインポテンツだ。そりゃあ「女」はいつでも肉体関係の初めに枠組み作るてことも、そんな「コトバ」がたいした重要でないってこともわかっているサッ・・・「被害者意識」のほうが、楽なんだろうな。誰が悪いわけでもない、「男の歴史」がその言葉を女達にいま逆手にして吐かせているにに違いない。・・・昔々は相手がそのつもりになッているのか、と思いきや、身体に触れだしたら「やめて-」だ。驚いた僕は彼女から離れて何か自分が恐ろしいことでもした気分になて飛び離れると「どうしてそんなに諦めがいいの」なんていわれて。少年みたいな僕は、目の瞳孔が開きぱなしだった。ペニスだってなんだってもう闘争意識は何処かへふっとんじゃてしまうのだ。「どうぞ、おやりになって」なんていう確実なサインがない限り頭と直結してるボッキ回路はパンクしてしまうのだ。不確かな経験は同じようにそれを乗り越えられない。なるほど、トラウマってヤツだ。あいつも、いじわるに同じことを僕にする。あいつの都合のいい時にキスなんかを迫ってき、僕の「男」が元気な兆候を見せても「危ない、危ない」って赤信号をださずにはいられない・・・「どんなに好きな人が出来ても子どもは作らないことにしているんだから」なんて言われるともう決定的なグワアアンとしたカウンタ-パンチが食らい込んでノックアウト。・・・正直なのか、信条なのか、そうであっても少しくらいは僕をダマしてくれてもいいんじゃないか。「あいつのはアイじゃないんだ。スキなんじゃないんだ。エロス?・・・そうでもない。なんなんだ。・・・僕はいまこの時、命を賭けた全実存で身体を重ねているんだ。・・・なのにどうして、どうしてそんな悲しいことを言うんだ。・・・サディスト・・・。

 ・・・・もうもう「心理学幻魔大戦」だ。「愛」じゃなくて、単なる「スき」の次元にレベルを下げるのだ。・・・そして戦いだ。

 あいつが「嫌い」になったんじゃない。・・・だが、「男」と「女」の「恋愛」は「ウソと誤解」から始まる。じゃあ終わりはなんだろう?・・・自分に対する「打算」?・・・僕があいつを「好きな分」だけあいつの「打算」は本物になっていく。・・・いや、そんなことはない。

 「愛」は実存を賭けた「自己犠牲」で、片思いをその物語にする「無法松」みたいな男もいるけれど、相思相愛がいい。・・・一方的な「好きな」次元じゃあ、嫌らしい自己偽満的な上辺だけの「親切」がのこる。・・・・そう・・・「心理学幻魔大戦」でゲ-ムだ。・・・でもそうは言っても「感情的な」部分で「愛らしきもの」が見えかくれしてしまう。

 ・・・・・オトコなのに寂しいな。

 「あなたがいれば、あなたがいれば寂しくないの・・・この東京砂漠」

 僕はズ-ッツと以前に、今日子ちゃんからこの詩の心境を訊いたことがある。彼女には彼氏がいて、それを僕に言うから、うらやましかった。そんな今日子ちゃんみたいな「女」と死ぬまで身体を重ねてみたいと思った。・・・でも、今日子ちゃんはその「男」とわかれてしまったッケ。


 コンピユータと「星」は駆引きがないな。・・・その自分の不理解度分だけ馬鹿にするけれど。・・・・SYNTAX ERROR・・・TYPE MISMATCH・・・・・まだ、まだ修正できる。

 ゲッツ、


 ・・・DISK I/O ERROR・・・・

 ・・・DISK I/O ERROR・・・・

 ・・・DISK I/O ERROR・・・・


 どうして、どうして、そうなってしまうんだ。

 どうして、どうして・・・・・・「星」・・・が・・・?


 そして、その結果だった。「恋愛仁義」をいとも簡単に行動で冒涜するやつがあいつなのだ。だが・・・あいつなりの優しいサインだったかも知れない。好きなN君との和解か。

 でも、僕は「白い手袋」を彼とあいつのデ-トしているテ-ブルの上に投げつけるのだ。・・・誤解なら、誤解している振りをしてやろう。わがままに「プライド」だけはまもりたい。

 どんな男でも、誰でも彼でもあいつとデ-トするやつは・・・「決闘」なのだ。 

 ・・・それしかない・・・武器、仕掛けたのは僕である。

 ソウ、「あいつとデ-トする男の有利な武器で結構」・・・・


 惜しくはないさ。もう、イノチなんて・・・どうでも。

 観たよな、最愛のインデアァンの血を引く妻を殺されたカーク・ダグラスと、敵役、アンソニー・クイーンの「ガンヒルの決闘」。

 観たよな、カ-ク・ダグラスと、過っての恋人の恋人ロック・ハドソンとの決闘、「ガンファイタ-」・・・自分の娘が恋人だった、なんてッ・・・黄色の沙羅のドレスが眩しかった・・・黒づくめのフィットした衣装とズボン、それにブーツッのメキシカンスタイルのカーク・ダグラス、小型で単発のデリンジャー拳銃・・・おじさんのとる道はコレッか・・・ナイ・・・

 「殺(ヤラ)れてもイイ・・・弾は拳銃から抜いておくさッ」


 僕と一緒に並んで歩きたくないんだ。並んで腕を組んで歩きたいと言った「女」は大勢いると言うのに。


 ・・・でも「おじさん」なんだよな。

 ・・・そして状況は「オジタリアン」か。

 

 「おにいちゃんなんかでないもん。おじさんは、おじさんだもん。さようならぁ~」


 僕は「杜子春」にもなれない・・・・かッ。


 ・・・「心理学幻魔大戦」は大好きな、大好きな敵を見失って戦闘不可能・・・

 ・・・ぴ、ぴ、ぴッ、P@I・PI・PI・PI・・・・・・・


 アトム、君はドコにいる・・・おじさんのア・ト・ム・・・は。

 きこえる・・・ボレロじゃない。

 ・・・ヤッパシ、ポルカだ・・・


 (ポルカだって!・・・脳天気で呑気なコト言って、どうしょうもないヤツだな、オマエは。アトムの誕生はダレも望んでいないんだぜ。誕生を望んでいるのは「鉄人28号」の後継ロボットだからな。)

 「鉄人29号・・・」

 (戦争屋のオモチャだ。鉄人30号は実験済みだ。鉄人31号は試作段階・・・ロボット爆弾は既に完成しているが、手塚治虫が産み出したものより劣悪で粗製濫造なものだ。第一、思考も哲学もしない無能なロボットだ)

 「自らの存在を思考して自爆した・・・ロボット爆弾の指導者・・・海底に戻って行ったロボット爆弾の一族・・・」

 (お前のグチャてるL問題なんかは吹っ飛んじまうのさ。留学したアイツが無事に戻ってくるかどうかはなッ・・・)

 「あいつが・・・?!」

 (見てろよ、権力を握った人間がナニをするのか、したのかヲッ!!)

 「テンアンモン・・・てんあんもん・・・天安門・・・1989・・・2003・・・」


   1989.3.27(初版)

   2003.3.07(改訂版)


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